ギュスターヴ・モロー - 福永武彦氏 (No.3)
今夜はすごくきれいな満月だったようですが
皆さんはご覧になりましたか? 今週辺りから
東京地方も急に寒くなってきましたが、どうぞ
皆様もお風邪など召しませぬようご自愛ください。
その満月が美しかったこともあり、ちょっと
幻想的な気分になって、以前から書きたかった
モローについて、本日は掲載したいと思います。
池上先生ご引率の鑑賞会で3度目のモローを
観てからレポートもままならなかったのですが、
あれからモローに関する本は何冊か読んで
おりまして、その中でもやはり、先日以来
度々、ご紹介していおります福永武彦氏の
『藝術の慰め』から抜粋して、少々まとめた
形に編集させていただきました。
図版は展覧会の図録からと、
「ギュスターヴ・モロー
絵の具で描かれたデカダン文学」
鹿島茂(著)から掲載させていただきます。
モローが当初、画家として影響を受けたと思われる
師は次のとおりです。
モローは1846年にパリ美術学校に入学して、
アングルの古典主義とドラクロワのロマン主義
を受け継いだシャセリオーに影響を受けます。
アングル『ジュピターとテティス』
以下は、福永氏によるモローのご考察です。
1.アカデミックな画家である
同時代(19世紀印象派)と何も共通点を持たなかった。
モローは官展の常連入選者であり、しばし特賞を受け、
国家からも勲章をもらったし、美術アカデミィの会員
にも選ばれた。晩年には、美術学校の教授だった。
その経歴は、我が国でたとえるならば、日展審査員を
経て、芸大教授兼芸術院会員とでもいったものである。
2.モローの世界
神話の世界である。旧約聖書やギリシャ神話に
基づいた人物たちを幻想風に描くことだった。
一生を通じて同じ主題を繰り返して掘り下げ、他に
類を見ない不思議な世界を創り出した。それらは、
歴史画でもなく、宗教画でもない。技術的に見ても、
写実画でもなく装飾画でもない。モロー特有の神話的
人物を、一種の理想を夢みて描き出した幻想的人物画
である。
3. 影響があったとされる文学作品
ヴィニイ「古今詩集」、ゴーチェの詩集や小説「ミイラ
物語」、ボードレール「悪の華」、ルコント・ド・リール
「古代詩集」、フローベルの小説「サランボー」、マラルメ
の詩集など。諸芸術はそれぞれに交流し合っていたので、
美術をただ美術の領域のみで判断することは、しばし
近視眼的になりやすい。モローの美術は、ユイスマンスの
小説「さかしま」の中で絶賛されているし、またピエル・
ルイスの詩や小説などにも影響を与えているかもしれない。
『一角獣』
4.神話の画家
限定すれば、神話的女性の画家である。
その代表ともいえるのが「サロメ」である。
多くの油彩、水彩、デッサンでサロメを描いた。
女性の中にある獣性への恐れが、同時に奇妙な
魅力となって内部で彼を誘惑していた点に、
このサロメの独特の美しさが生まれてくる。
サロメは聖書の中の登場人物というよりは、
ギリシャ神話とイタリア美術との混ざり合った
一種のエキゾチックな女性で、しかもフランス
的な典雅な匂いにも欠かない。
5. 芸術の呪縛
女性が危険な魅力によって男性を死に追いやるように、
芸術もまた危険な魅力によって、芸術家を呪縛する
ものだ、という思想がモローの内部にあったかも
しれない。芸術とは運命への挑戦であり、モローは
まさに彼自身の芸術に呪縛されながら、呪縛その
ものを主題に、その一生を賭けたといい得るのである。
☆ モロー「関連サイト」 - 「こひつじの毎日」のめりの
さんよりリンク先を教えていただきました。なんと、
福永氏の解説が入っていたので嬉しい驚きでした!
☆ カイエ様の
ギュスターヴ・モロー『出現』 ~巫女のようなサロメ~
にも詳しくサロメについてご考察を書かれています。
☆ モロー信者のアイレ様がモロー展終了後に書かれた
ギュスターヴ・モロー展-6
にやはり詳しく同展について書かれています。
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