ギュスターヴ・モロー

2005/11/17

ギュスターヴ・モロー - 福永武彦氏 (No.3)

saidan
                    -贖い主キリスト -

今夜はすごくきれいな満月だったようですが
皆さんはご覧になりましたか? 今週辺りから
東京地方も急に寒くなってきましたが、どうぞ
皆様もお風邪など召しませぬようご自愛ください。

    night 『夜 (ナイト)』

その満月が美しかったこともあり、ちょっと
幻想的な気分になって、以前から書きたかった
モローについて、本日は掲載したいと思います。

池上先生ご引率の鑑賞会で3度目のモローを
観てからレポートもままならなかったのですが、
あれからモローに関する本は何冊か読んで
おりまして、その中でもやはり、先日以来
度々、ご紹介していおります福永武彦氏
藝術の慰め』から抜粋して、少々まとめた
形に編集させていただきました。

     図版は展覧会の図録からと、
   「ギュスターヴ・モロー
         絵の具で描かれたデカダン文学」
          鹿島茂(著)から掲載させていただきます。

        reda 『レダ』 (表紙部分)

モローが当初、画家として影響を受けたと思われる
師は次のとおりです。
  

  モローは1846年にパリ美術学校に入学して、
   
アングルの古典主義とドラクロワのロマン主義
     を受け継いだシャセリオーに影響を受けます。

     i
アングル『ジュピターとテティス』

     doraqrowa 『ピエタ』ドラクロワ
   
                                    seshario   
                           
シャセリオー『エステルの化粧』

以下は、福永氏によるモローのご考察です。    

1.アカデミックな画家である
   同時代(19世紀印象派)と何も共通点を持たなかった。
   モローは官展の常連入選者であり、しばし特賞を受け、
   国家からも勲章をもらったし、美術アカデミィの会員
   にも選ばれた。晩年には、美術学校の教授だった。
   その経歴は、我が国でたとえるならば、日展審査員を
   経て、芸大教授兼芸術院会員とでもいったものである。

  2.モローの世界
      神話の世界である。旧約聖書やギリシャ神話に
      基づいた人物たちを幻想風に描くことだった。
      一生を通じて同じ主題を繰り返して掘り下げ、他に
      類を見ない不思議な世界を創り出した。それらは、
      歴史画でもなく、宗教画でもない。技術的に見ても、
      写実画でもなく装飾画でもない。モロー特有の神話的
     人物を、一種の理想を夢みて描き出した幻想的人物画
     である。

     europe 『エウロペ』

 3. 影響があったとされる文学作品
   ヴィニイ「古今詩集」、ゴーチェの詩集や小説「ミイラ
      物語」、ボードレール「悪の華」、ルコント・ド・リール
   「古代詩集」、フローベルの小説「サランボー」、マラルメ
      の詩集など。諸芸術はそれぞれに交流し合っていたので、
      美術をただ美術の領域のみで判断することは、しばし
   近視眼的になりやすい。モローの美術は、ユイスマンスの
      小説「さかしま」の中で絶賛されているし、またピエル・
   ルイスの詩や小説などにも影響を与えているかもしれない。
    
         ikakujyu 『一角獣』
   

 4.神話の画家
   限定すれば、神話的女性の画家である。
   その代表ともいえるのが「サロメ」である。
   多くの油彩、水彩、デッサンでサロメを描いた。
   女性の中にある獣性への恐れが、同時に奇妙な
      魅力となって内部で彼を誘惑していた点に、
      このサロメの独特の美しさが生まれてくる。
      サロメは聖書の中の登場人物というよりは、
      ギリシャ神話とイタリア美術との混ざり合った
   一種のエキゾチックな女性で、しかもフランス
   的な典雅な匂いにも欠かない。

     salome_003 
      
  『ヘロデ王の前で踊るサロメ』 (部分)

 5. 芸術の呪縛
      女性が危険な魅力によって男性を死に追いやるように、
      芸術もまた危険な魅力によって、芸術家を呪縛する
      ものだ、という思想がモローの内部にあったかも
      しれない。芸術とは運命への挑戦であり、モローは
   まさに彼自身の芸術に呪縛されながら、呪縛その
     ものを主題に、その一生を賭けたといい得るのである。

    shutugen_salome 『出現』(部分)

☆ モロー「関連サイト」 - 「こひつじの毎日」のめりの
      さんよりリンク先を教えていただきました。なんと、
      福永氏の解説が入っていたので嬉しい驚きでした! 

☆ カイエ様の
      
ギュスターヴ・モロー『出現』 ~巫女のようなサロメ~
      にも詳しくサロメについてご考察を書かれています。 

☆ モロー信者のアイレ様がモロー展終了後に書かれた
       
ギュスターヴ・モロー展-6
      にやはり詳しく同展について書かれています。 

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2005/09/01

ギュスターヴ・モロー展 No.2(前期2回目)

 8月27日(土)の午後、ギュスターヴ・モロー展
 2回目を観て参りました。初めて本格的にモロー
 の幻想的な絵画に触れてどのようにそれを表現
 してよいか迷いながら書いた
感想文にも沢山の
 方がコメントやリンクやTBをして頂きまして、その
 時はこんなにもモローが多くの人たちに愛されて
 いるかを知ることができました。また、ブログ仲間
 の輪もその時にぐっと広がり嬉しく思っております。
 皆様、今後もよろしくお願いいたします(*- -)(*_ _)

 ところで、2回目に行きましてもやはり一回目に
 見てとても惹かれた《エウロペ》や《一角獣》も
 よかったのですが、一番心に残ったのはやはり
 水彩画で小さい作品の
 《ケンタウロスに運ばれる死せる詩人》です。
 この作品を描いた年は、恋人のデュルーが
 亡くなった年(1890年)でもあったようですね。
 それで、このように最果ての絵が心の底から
 描けたことが分かりました。悲しみに満ちている
 けれども、人間には宿命があるということや
 愛する人を守り通せなかった自分の悔恨などが
 透明感のある水彩で美しく描かれていたと思い
 ます。 この作品をもう一度観ることができて
 ある意味、死に対する覚悟というのが少し持つ
 ことができました。このように美しい死を迎える
 日がくるまで、多くの素晴らしい絵画を見て
 行きたい、と思っています。

    aquarelle_gauache

   そして、他の皆様がお好きな「出現」ですが
  私はその絵よりも一連の『サロメ』のために
   描いた習作の方がモローのサロメに対する
   愛情を感じましたので、次にサロメ関連の
   図版をご紹介します。

      salome
      『サロメ』 油彩 1875年頃

 『ヘロデの前で踊るサロメ』のための習作
  のような油彩ですが、実際はこのドレスの
  ドレープが優雅にもっと厚みのある感じが
  してとても豪華でした。サロメも踊りに
  気持ちを集中させて祈るようにしている
  横顔が素敵です。嵐の前の静けさのように
  心を落ち着けているこの絵にすごく惹かれ
  ました。

 次はその『ヘロデの前で踊るサロメ』のため
  の習作です。

   shusaku
          
ペン・墨・透写紙

    Salome1

  上記、『ヘロデの前で踊るサロメ』(部分)の油絵
     は後期に観れるのでしょうか?こちらの方が
     「出現」より好きかもしれません。

  またこのモローの『サロメ』シリーズがワイルド
    とビアズリーに影響を与えたことは皆さんも
    ご存知かと思いますが、10月に
    「
アートナビゲーター3級」という試験を受けてみる
    つもりですが、その検定試験想定問題集に
    その「ワイルドとビアズリー」について書かれたこと
    を少し抜粋させていただきます。

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200px-Beardsley_apotheose
オスカー・ワイルドは戯曲『サロメ』
1893年に執筆し発表した。最初は、
その当時、一世を風靡していた
サラ・ベルナールに演じて欲しかった
のだが、これは実現しないでいたが
別の女優が演じられて評判になった。

 1894年に英訳が刊行され、これに挿絵を描いたのが
 21歳のオーブリ・ビアズリーであった。ラファエル前派
 と日本の浮世絵の影響を受け、大胆な省略、鮮やかな
 白黒の対比、そしてなによりも繊細で官能的な線描に
 よって強烈な印象を与えるビアズリーの挿絵は、
 『サロメ』のイメージを決定的なものにした。

 『新約聖書』の逸話に姿を見せる少女は、世紀末
 ならではの「宿命の女」像へと変容するが、視覚
 芸術においてはギュスターヴ・モローとこの
 ビアズリーの貢献が最も大きいといえるだろう。

 しかしワイルドはといえば、ビアズリーの芸術を
  さほど評価せず、その存在をあまり快く思って
  いなかったらしい。結核のため、1898年、25歳
  という若さで死去した。たった5年間という活動
  期間だった。

 ワイルドもその2年後の1900年46歳の時に
  家族からも見捨てられパリの安宿で亡くなった。

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 二人ともサロメにやはり幻惑されて早死に
  されたのでしょうか? ビアズリーも私の若い時
  にアート仲間で憧れの存在でしたが、今、見ると
  魅力的だけど、やっぱりずーと見てると毒気に
  当てられて早死にしそうです・・・

 今日は暑さがぶり返しましたが、皆様もどうぞ
 残暑がまだ厳しいおりお体にご留意くださいね。
 サロメの魔力にはまり過ぎないように~~(ё_ё)

 

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2005/08/14

ギュスターヴ・モロー展 - Angel Series No.7 (モローNo.1)

8月12日(金)、会社の帰りに渋谷、Bunkamura
で現在、会期中の「ギュスターヴ・モロー展 」を
観て参りました。

   

      moreau_ikakujyu

こういう象徴主義という作品を観るのは初めての
経験でしたが、煌くような色彩と幻想的な世界が
造り出す独特の世界に魅了されてきました。

ただ、印象派の世界に慣れているだけに、どう
感想を書いてよいか難しく感じておりますので
Angel Seriesの一環として、私が好きな絵を
ご紹介させていただきます。
追記: ギュスターヴ・モローの項目を後で
     作成しました。

まずは、
<神々の世界> に展示してありました
《エウロペ》あるいは《エウロペの誘拐》 1868年
です。

     europe

   この作品は、エウロペがユピテル(牡牛に変身)
   の背に乗った瞬間を描いているそうです。
   女性の動きが何枚も習作で描かれていました。
   神々しい輝きを放っている美しい絵でした。

<詩人たちの世界>
 

    aqarella
       《夕べの声》 水彩 

  何時もお世話になっております千露様も
  この絵が一番お好き!と感想文にも書かれて
  いました。水彩で描かれた小さな作品(34.5x32cm)
  ですが、楽器を携えた奏楽の天使達が浮遊する姿
  が荘厳で華麗に見えます。(この作品は後期です)

    aquarelle_gauache
    《ケンタウロスに運ばれる死せる詩人》   

    《旅する詩人》も良かったのですが、
    これも水彩で描かれているのに、 神の声
         を運ぶ詩人でさえいつかは死ぬ運命
    を哀しみと共に、またそれを包み込む
    ケンタウロスの優しさをも感じさせる
         詩的で劇的な思いが伝わる作品だと思います。
    背景の夕闇も運命の儚さを感じさせる静寂
    を伴う壮絶な作品ですが、何かこちらにも
     強く死への哀しみを考えさせられる作品だ
     と思いました。

<魅惑の女たち、キマイラたち>     
          

     ikakujyu 
        《一角獣》 1885年頃 油彩

        この作品は絵の中からキラキラと宝石
    のように光が輝いてくるものがあり、
    やっぱり、 一番素晴らしい作品のように
    思いました。
   少し図版の印刷がよくないのですが、
   一角獣と女性とのなんとも怪しげで美しい
   眼差しと左の女性のドレスには細かい模様
   (アラベスク模様)が墨で描かれているのも
   豪華絢爛な感じがしますが、天国があったら
   こういう世界ではないかしら?と思うような
      それこそ幻想的な世界でした。モローが依頼者
    に渡したくなくてわざと未完成にし、最後まで
   アトリエに置いて手離さなかったほど愛着が
   ある作品とのことです。この絵を観るだけでも、
    この展覧会へ足を運ぶ価値は十分あると
    思います。

    hercule
    《ヘラクレスとオンファレ》1856.57年
                    油彩
   

         何やら女性が男性の頭に手をおいて
    いる後ろには、愛の使者アモールが
     います。この天使のブルーの羽の色が
    大変鮮やかで今にも絵から飛び出して
    きそうな羽の動きを感じました。


 <聖書の世界>

    jacob
        《ヤコブと天使》 22x15 油彩

    とても小さな作品なのに、とても力強く
    何度も観に来てしまいました。モローは
    女性を崇拝していたのでしょうか?
    女性の方が男性よりも強く何かを勇める
    感じが全体から伝わってきます。しかし、
    描かれている女性の肉体は決して女性の
    体の線ではなく、男性的で筋肉質です。
     フランスが物質社会になっていくのを
    戒めるために描いたとも言われています。

モローは精神的な世界に重きを置いていた、という
のが感じられるモローの静寂で耽美な世界が少し
理解できた展覧会でした。

後期も時間があれば行って見たいと思います。

【後期】9月13日(火)~10月23日(日) 160点出品

ご参考にモロー関連サイト

 ☆Musée National Gustave Moreau, Paris

  ☆Arts at Dorian / Gustave Moreau (1826-98)

 ☆青色通信(アイレ様の素晴らしい感想文です)
      ギュスターヴ・モロー展-2
      水に咲く花-ギュスターヴ・モロー水彩画の魅力

 ☆前期2回目の拙感想文です。

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