「ウルビーノのヴィーナス展」 - 池上先生との鑑賞会
martedi, il sei maggio 2007
sono le ventitre meno cinque
「ウルビーノのヴィーナス展」@国立西洋美術館
5月2日(金)、国立西洋美術館で18日まで開催中の
「ウルビーノのヴィーナス展」を池上先生のご引率の下、
VTCのメンバーと夜間鑑賞会を開催しました。今回は
遠方よりカイエ・ブログのLapisさんとダンさんが参加して
くださって本当に感激でした~
小雨降る中でしたが、恵泉大学の生徒さんを含め、VTCメンバー
合わせて合計25名ほど集まって下さいました。まずは地下のホールで
先生のご用意してくださったプリントを見ながら、レクチャーを拝聴
しました。主に、ヴィーナスの変遷でしたが、図版とともに大変分かり
やすいご解説でしたので、これからヴィーナスの美術・工芸品を鑑賞
するのに、事前知識として古代からのヴィーナスがどのように描か
れてきたか体系的な流れがわかったので、その後の鑑賞でも見逃して
しまいがちな作品でも先生の教えて頂いたことで、作品を凝視する
ことができました。今回、気に入った絵をご紹介したいと思います。
ティチィアーノの「ウルビーノのヴィーナス」については、先日の
国際シンポジュームで詳しく書きましたので、よろしかったら
こちらからご覧くださいませ→
しかし、今回は先生のご説明とわん太夫さんから双眼鏡を
拝借しましたら、キラキラと画面が所々光っておりまして、
ヴィーナスの肌の質感も柔らかで温かみがあって、人間的な
温もりを感じる素晴らしい絵であることが感じられて、涙が
こぼれそうになりました。皆さんもこちらの絵の前では、一番
長く鑑賞されていて感激されている様子でした~
こちらのヴィーナスにはいろいろな解釈が あるようですが、
ティチアーノという画家が50歳という年齢も技術も円熟したときに
描いた人間的なヴィーナスは500年近く経った今でも私たちに
艶っぽく微笑みながら、
「もっと人生を 楽しんだら!」と励まして語りかけてくれるように
本当に生きているような体感に包まれました。
素敵な絵をウフィツィから拝借できて感謝します。
先生が、フランチェスコ・ペトラルカの『凱旋』の原書を
お持ちでしたが、その中の第2の「羞恥」、情熱に打ち勝つ
美徳の凱旋を描いているとご説明くださいました。以前は
通り過ぎてしまった絵ですが、先生が少しでもご説明をして
くださるとまるで魔法にかかったように絵が動き出してきて
もう一枚の板絵「愛神の凱旋」とともに明るく絵が浮き立って
見えてきたのが不思議でした~
6つの凱旋を右から表しているそうで、
1.肉体的な愛(エロス)、2.精神的な愛(貞節)、
3.死 (愛も死に勝てない)、4.名声、
5.時、6.キリストの栄光
とメモしてみました。
この絵は、よく観ると本当に煌びやかで祝祭のようなお祭りの
華やかがありますね!ペトラルカの詩の内容が分かったら、
もっと絵も楽しく観れることでしょうけれど、ちょっとした先生の
ヒントでぐっと絵が活き活きとして見えてきます。
はじめは、ボッティチェリに帰属されていた、と図録には掲載
されていますように、花柄の衣装のドレープの軽やかさが「春」
を思わせますね~
もう一枚の板絵の画像を掲載します。山車の頭上にいるのは
愛神アモルが目隠しなしで矢を放とうとしているのを凱旋に
参加している人たちが見上げています。ペトラルカの詩と当時
のフィレンツェのお祭り(カーニバル)の様子を賑やかに現して
いるそうです。現代版、ディズニーランドのパレードを観ている
よう で、 このような神話的なパレードなら楽しくて実際にみて
観たくなったり、参加したくなりますね~
☆☆☆
「パリスの審判」 部分
1430年頃
Bargello
図録に3美人がアップしてあったのがきれいでしたので
掲載してみます。「パリスの審判」はホメロスの「イリアス」
に述べられているエピソードだそうです。ヘラ、アテネ、
アフロディテの中で、一番綺麗な女神にリンゴを渡すシーン
で、トロイア戦争が勃発するなど面白いお話なのか、美術
工芸品によく描かれているようです。2回目にみたらやはり
とても装飾的で背景の自然と動物などもエレガントな雰囲気
がして、好きな一枚です。まだ、この頃は服を着せていましたが、
1530年ごろに描かれた同一主題で、ルカス・クラナーハ(父)の
作品では裸体になっていることなど、先生がご解説下さいました。
***
途中の漆喰の小箱に三美神が描かれていて、こちらに背を
向けている女神がいるのは、ラファエロの「三美神」の図像
を継承しているとのことで、本当に真ん中の女神はお尻を
こちらに向けていました~
***
「ヴィーナスとサテュロス、小サテュロス、プットー」
アンニバレ・カラッチ
1588-89年
今回の絵の中で、「ウルビーノのヴィーナス」の次に傑作なのが
こちらのカラッチの作品でした。先生も「大変重要な画家です。」と
おっしゃっていましたが、ヴィーナスの肉感的な迫力は素晴らしく
背後のサテュロスとの光と影のバランスなども絶妙で、最初は
それほどよく観えなかったのですが、まるで生きているような
ヴィーナスの背中の肌質は素晴らしかったです。ヴィーナスの
腕輪にも三美神が小さく描かれているそうです。
***
最後に展示してあった本作品の前で、皆さんが立ち止まって
鑑賞するほど、光の当たり方がバロック的でハッとするような
美しくてモダンなヴィーナスに描かれています。腕に巻きつくヘビ
や鏡がおいてあることや息子のキューピットが絵のカーテンを
開けようとしているのを静止する「賢明」の寓意であるヴィーナス
のしぐさもドラマティックですね!図録には、グイド・レーニが作者
であったと記述されたこともあったそうですが、メディチ家の寝室
にプライベートに秘蔵されていた魅力的な絵は、ヴィーナスが少し
人間的な動作の中で親しみが持てる作品ではないかと思います。
そのほか、彫刻などもポーズの変遷などが、着衣から裸体、
そして右腕を上げて後ろの衣装を持ち上げているポーズ、
恥じらいのポーズなどが古代からルネサンスの作品へと継承
されていることなど作品を観ながら先生に解説していただき、
大変、勉強になりました。
2時間余りがあっという間に過ぎてしまって、先生のご解説と
各ヴィーナスの美しさに酔いしれて、美術館を後にしました。
その後は、わん太夫さんが懇親会の幹事さん役を引き受けて
下さって、遅くまで上野周辺で盛り上がりました~ 遠くから
ご参加下さった方もいらして今回は皆さんがニコニコと笑顔も
輝いていらしたので、 先生とともに楽しく過ごしてくださった
ことと私も大変嬉しかったです~
先生はじめご参加いただいた皆様も有難うございました。
また、VTCはこれから少々、今までと違った会に変化して
いくことになるかもしれませんが、美術愛好家がますます
増えていくようなそんな草の根活動的な会になっていく
予定です。今後もどうぞよろしくお願いいたします。
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コメント
Juliaさん、おはようございます。
先日はお世話になりました。
池上先生のお話は入場直後のミニレクチャーを楽しみました。
入場後はキレギレにしか聞こえてこなかったのですが、この記事でその一部を知ることができました。ありがとうございます。
2次会も良かったようですね。
投稿: とら | 2008/05/07 07:34
とらさん
早速、コメントを有難うございました~

こちらこそ、とらさんに久しぶりにお会いできて
嬉しく思いました~
先生のレクチャーがあるかないかで、はるかに
絵を観る楽しさが違ってきますね!!!
今後ともVTCではとらさんのご協力を仰ぐことに
なるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
投稿: Julia | 2008/05/07 08:07
Jennyが雰囲気は審判ー!
投稿: BlogPetのJenny | 2008/05/07 09:06
Juliaさんこんばんは
先日は、お世話になりました。
おかげさまで、中身の濃い鑑賞会を楽しむことができました。
特に『キューピットを鎮める「賢明」』は、気に入りました。
先生のご解説がなかったなら、ヴィーナスの顔に見とれて腕の蛇は気がつかなかったと思います。(笑)
めったに参加できないとは思いますが、
今後とも、よろしくお願いいたします。
投稿: lapis | 2008/05/08 00:19
lapisさん
先日は遠方よりお越しいただいて、先生はじめ
本当に有難うございました。
VTCメンバー全員が嬉しくもあり感激いたしました~
lapisさんから頂いたクッキーは大変美味しかったです~

お隣のお店のシェフの方によろしくお伝えくださいませ。
東京ではあのように材料をリッチに使うお店が減っているので、こちらも感激のお味でした~
遠方でもこれから、VTCの活動をネット上で広げていくような動きをするかもしれませんので、そのときはlapisさんにもご協力を仰ぎたいと思っております。
池上先生のような無償で鑑賞会を開いてくださる神様のような方は中々いらっしゃらないので、また機会がありましたらぜひご参加くださいませ。
今後もどうぞよろしくお願いいたします。
投稿: Julia | 2008/05/08 07:07
Juliaさんが、VTCを作ってくれたから、こんな楽しい観賞会を観ることができました。
次回も是非、参加したいと思います。
本当にありがとうございます。
投稿: えこう | 2008/05/09 23:11
えこうさん
>Juliaさんが、VTCを作ってくれたから、こんな楽しい観賞会を観ることができました。
うぅうるうる~
お優しい言葉を有難うございます。
これも一重に池上先生や協力してくださる皆さんの
お陰です。
えこうさんも絵が大好きなんですね~

また、ぜひ皆さんとご一緒に楽しみましょうね~
今後もよろしくお願いいたします。
投稿: Julia | 2008/05/10 00:43
遅くなりましたが、鑑賞会の記事を書きました。
TBさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
記事では書かなかったのですが、「羞恥の凱旋」の寓意は面白かったです。
このような作品は、解説のありなしで、本当に見え方が違ってくる作品だと思いました。
投稿: lapis | 2008/05/10 14:30
Lapisさん
素晴らしい記事にTBを送っていただきまして
有難うございました。
Lapisさんが先生のご解説を的確な言葉とともに
お調べになったことも追記していただいて、本当
にさすがに文芸派の方の文章の旨さに脱帽です。
mixiにもご登録いただいたので、これからは
遠方でもいろいろとすぐに連絡し合えるので
よろしくお願いいたします。
投稿: Julia | 2008/05/10 19:42
juliaさん、懇親会ではたいへんお世話になりました。
遅れてまいりましたのに、池上先生とjuliaさんのお向い特等席に座らせていただき、感激でございました~。
残念ながら鑑賞会には参加出来ませんでしたが、juliaさんが詳しくわかりやすく書いてくださっているので、じっくり読ませていただきました。
素晴らしい展覧会でしたよね。感動がよみがえってまいりました。
これからも、機会あれば集いに参加したいと思っています。
どうぞ、よろしくお願いいたします(^^)/。
投稿: ダン | 2008/05/11 08:38
ダンさ~ん
こちらこそ、ダンさんにお目にかかれて、とても嬉しかったです~
お土産でいただいた奈良の春のカードや伝統的でいてモダンな絵柄のお布巾も大事にさせて頂きます。
ヴィーナスの展覧会を観てからギリシャ神話を読み返していますと古代からさまざまな芸術家がインスパイアーされて、
神と人間性を美で表現していることに新たな感銘を受けています。
また、今度ともダンさんともネットばかりでなく、私も機会がありましたら、古都にも伺うつもりですので、そのときはよろしくお願いいたします。
お忙しい中、懇親会にいらしてくださって心より御礼申し上げます。
投稿: Julia | 2008/05/11 08:58
こちらにも記事があったんですね ♪ d(⌒o⌒)b♪
気がつきませんで・・・
でもあの時は楽しかったですね。
未だ余韻が残っています、はい \(*´∀`*)ノ
投稿: わん太夫 | 2008/05/13 20:58
わん太夫さん
いつも本当にほんとう~~~にお世話になりまして
有難うございます。
わん太夫さんのお陰で、無事に懇親会も楽しく過ごせて
でもご馳走させてくださいね~
ミズシーさんとともに、今度は生大
そういえば、今週の土曜日は先生の講演会があるそうですが、先ほど慌てて申し込みをしましたが、わん太夫さんは
申し込まれましたか? それとバラの写真会は何時に??
投稿: Julia | 2008/05/13 21:27
VTC鑑賞会のご縁に深謝申し上げます。
前回の常設展示はワインの味わいでしたが、
今回はLapisさんの文芸博識や池上先生の講義で
魅惑的なカクテルのような味わいです。
そして鑑賞会で感激のご縁がたくさんありました。
フランチェスコ・ペトラルカの『凱旋』と共に
凱旋図の解説は とても興味が惹かれました。
イタリア美術史を一生懸命追い駆け中です。
Juliaさんの幸せの磁石 とても凄い磁力ですよ。
投稿: panda | 2008/05/14 22:06
pandaさん
こちらこそ、いつも明るいpandaさんですから
ご一緒に鑑賞してくださるのは大歓迎です~
pandaさんもブログを書かれていたんですね!!
素晴らしい内容で初めて知りました。TBは
後日、伺いますね
>Juliaさんの幸せの磁石 とても凄い磁力ですよ。


ワォ~どうも有難うございま~すぅ~
池先生がやはり一番にキラキラ星を降って下さるので
みなさんを幸せの世界へ連れて行ってくださるようです~
投稿: Julia | 2008/05/14 23:46