「幻想の肖像」 澁澤龍彦著 - 『鏡を見るヴィーナス』 ベラスケス
mercoledi, il 5 luglio 2006
会社でお世話になっているT氏が澁澤のエッセィを
貸してくださいました。いつもありがとうございます。
幻想の肖像 河出文庫
渋澤 龍彦 (著)
内容(「BOOK」データベースより)Yahoo
透徹した独特の審美眼によって、シュールレアリスム
の作品をはじめとする幻想絵画について詩情あふれる
エッセイを発表してきた著者が、愛好するヨーロッパの
36の名画をとりあげながら、描かれた女性像をめぐり、
そのイメージにこめられた女性の美やエロス、また魔的
なるものなどについて、博識に裏打ちされた鋭利な
印象批評をくりひろげる、魅力あふれる芸術エッセイ集。
「あとがき」から
昭和45年1月から47年12月の3年間を「婦人公論」の
巻頭の口絵の解説を書いていたそうです。自分で好きな
角度から自由に言及するので、楽しい仕事であった。」と
書かれています。 肖像画ばかりでないが、意識して
女性像、しかも美しい女性像を選んだつもりである。。とも。
東美で7/2まで開催されていた「プラド美術館展」へ4回
(レポート2回、4回)も行ったのですが、そのときに初めて
鑑賞して感銘を受けたのは、ベラスケスが人間の内面性
を描き出していた艶やかな絵画でした。
澁澤は上記の本文中で、そのベラスケス作、
『鏡を見るヴィーナス』について書いているのでご紹介
したいと思います。
『鏡を見るヴィーナス』(ロークビーのヴィーナス)
(Venus del espejo) 1648年頃
122.5×175cm | 油彩・画布 |
ロンドン・ナショナル・ギャラリー
ベラスケスはその生涯に少なくとも5点の裸婦像を描いた
とのことですが、残っているのは、このロンドン・ナショナル・
ギャラリー所蔵の『鏡の前のウェヌス』だけだそうです。
17世紀のスペインであれほど優れた画家がいたにも関わらず、
ヌード画というのがほとんど見あたらず、これはベラスケスが
描いた珍しい裸婦像というだけでなく、スペイン絵画史上に
おいても珍しい裸婦像とのことです。
この絵は、ベラスケスが2度目のローマ滞在の間に描かれて
いたので、ティツィアーノが何度も描いた有名な「横たわる
ウェヌス像」に刺激されたか、ヴィラ・ボルゲーゼのヘルマフロ
ディトゥス(紀元前3世紀)の姿態からヒントを得た(ケネス・
クラーク郷)とも友人のルーヴェンスの影響とも言われている
そうです。
そして、また、ロココ時代以前の、うしろ向きのヌード像という
のも珍しくクピド(キューピッド)がいなければ、この若々しくて
痩せ過ぎの女性があの美と愛の女神であるとは、誰にも
考えられない、とのことです。ティツィアーノやジョルジョーネの
豊満なウェヌスとは違ったいかにも親しみが持てて近代的な
ウェヌスに見える、とも書かれています。
また、ヨーロッパで美人の条件として珍重されている「ミカエル
の菱形」と命名されるおしりの上にあるえくぼのことで、この
ウェヌスのように「ミカエルの菱形」がくっきりと露われている
美しい婦人像は非常に珍しい、と渋澤らしいご見解ですね!
1914年に、ある婦人参政権論者の女性によって、この絵は
7カ所も傷つけられたそうです。ウーマン・リブの女性は何を
もってして、この美しい絵の女性を傷つけようとしたのでしょうか。。
渋澤は「嫉妬」したのかもしれない。。と書かれていましたが。。
皆様はどう思われますか?
☆ベラスケスについて、今年の始めに雨の降る寒い中、
観にいきました映画の記事で少しまとめてあります。
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