ティツィアーノ・ヴェチェリオ Tiziano Vecellio 「風の琴」 第3話 恐れ III
「プラド美術館展」を土曜日に皆さんと鑑賞してから、
以前、こちらでもご紹介した 辻 邦生氏の「風の琴」
をまた読みたくなっておりました。
といいますのも、こちらの図録の表紙もティツィアーノ作
ですが、「風の琴」本文中にも図版(自画像)が掲載され
ていたからです。
昨日の夕方頃、私の携帯に着信履歴が表示されて
いて、ピッチの番号だけで、誰からか登録していません。
でも、ピッチを使用している人が何人かいるのですが、
普段はあまりかけ直さないのですが、何故かひどく
気になってかけてみることにしました。
「もしもし~、Tです!」とおやまぁ~渋めのいい声
のT氏からではありませんか!!
「辻氏の本があったけど買っておきましょうか?」
「***ヾ(≧∇≦)ノ"***きゃぁ♪ええ!!ぜひぜひ!!」
と鑑賞会でも評判になっているT氏がまたまた辻氏のご本
を古本屋さんで(お休み中)発見してくださいました!!
さっそく、「第三話 恐れ」を読み返してみました。図版は
懐かしいティツィアーノ・ヴェチェリオ(1488-1576)の
自画像がありました。
Museo del Prado, Madrid
1567-68
辻氏の図版解説によると、この自画像は80歳頃
に描かれたそうです。兄弟子のジョルジョーネは
早折してしまいましたが、ティツィアーノは99歳の
長寿を保ちました。生涯栄光に包まれ、王侯の
顧客も多かったとのことです。特に肖像画にすぐれ、
北方のリアリズムにヴェネツィア画派の豊かな色彩
を加え、 性格の内面の把握と表現は見事です。
本文中で語られているのは、次の絵です。
『賢明の寓意』
National Gallery, London
1565-70
以下、本文から抜粋です。
「謎めいた絵ですが、魅惑的です」ジョバンニは
息をつめるようにして言った。「それに先生のこの
激しい筆触。先生の筆になると、ふだん見慣れた
ものも特別なものに見えてきます。どうしてでしょうか」
「たぶんわしがこの世を愛しているからだろう」老人は
画筆を置くと、室内帽に手をやりながら、神経質に言った。
画布には、正面向きの男の顔を真ん中にして、その右に
若者の横顔、左に老年の男の横顔が描かれていた。右
から左へ若者、壮年、老年と人生の変転が寓意的に描
かれている不思議な肖像画であった。老人は、老年の
男のモデルに自分を選んだ。そして、実際より、ずっと
激しい表情に描いた。
「これはわしが不死であることを示しているのだよ。
わしは今は老人だが、本当は、壮年でもあり、君の
ような若者でもある。そのどれでもであり、そのどれも
でない。つまり青年、壮年、老年を超えた<生命>その
ものが、わしの姿なのだ。この<生命>は年齢によって
さまざまな形を現すが、決して滅びることはない。
分かるかね、<生命>は生きることを喜んでいるあいだは、
不滅なのだ。不死なのだ」
『ダナエ』
Museo del Prado, Madrid
1553-54
DETAIL: "Little dog sleeping"
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