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2005/11/27

ベルギー近代の美 - 池先生鑑賞会 No.4

 

   red_leaves
     - 燃えるように紅葉した府中の森公園 -

本日(27日)が最終日の府中市美術館で開催していました

ベルギー近代の美 :印象主義から表現主義、そして抽象へ
 ・・・/マグリット、デルヴォー、アレシンスキーほか」

池上先生のご引率の元、第4回目の鑑賞会を昨日
楽しんで参りました。今回の参加者は、「
美術散歩」の
とらさんと「
Megurigami Nikki」さんと初参加でとても素敵な
お写真を撮られている「
水色ノート2冊目」の水色さんと
私の4名でしたが、少人数ながら池上先生の解説を身近
に受けることができ贅沢な時間を過ごせました。

私は午前中、友人のクリスマス・バザーに行って参りました
ので、30分程着くのが遅くなってしまいましたが、皆さん
はお先に、府中市美術館の学芸員の音ゆみ子様より
ギャラリー・トークを受けていらっしゃいました。

ベルギーの前身であるフランドル時代には、ファン・アイク、
ブリューゲル、ルーベンスなどヨーロッパ美術を代表する
巨匠たちがいます。しかし、ベルギーの近代絵画ついては
私はあまり親しくないと思っていましたが、ルネ・マグリット
の作品の前に立ったときに、若い頃、マグリットの 「大家族」
幻想美術館様)は、私の青春!という感じで自分の部屋に、
あの鳥の飛翔のポスターを飾っていて、日夜眺めていたこと
を懐かしくタイムスリップしてその場で思い出しました。

今回は、ベルギーの近代絵画の変遷というのでしょうか。。
タイトルのとおり、フランスの印象主義から影響を受けて、
表現主義へ移行し、最後は抽象主義に至るまで、作品数は
少ないながら、主だった作品を観ながら、最初は学芸員の
音氏、その後池上先生にもご説明を受けることによって、
よく理解できました。両氏とも、本当にありがとうございます。

お二人のご説明を交えて教えていただいたことを記します。
ベルギーのヨーロッパにおける位置は、Nikkiさんの
ブログ
地図があるのでご覧いただけるとして、ベルギーというのは
ヨーロッパの中でも小国(四国の1,5倍)ですので、その地理的
な要因が大きく独自の文化を持ちにくいために、フランス、
オランダ、ドイツ、イギリスなどからの影響を受け入れ、多文化
を理解しよう、個人の個性を尊重しようという姿勢があるとの
ことでした。

そのため、フランスでは印象派の作品が最初は酷評された
のですが、ベルギーの文学者であるオクターブ・モースと
エドモン・ピカールが1883年にブリュッセルで前衛的美術
サークル、「二十人会 レ・ヴァン / Les XX」 を創設して
フランスの印象派の作品を紹介したり、外国の前衛的美術
を積極的に評価することにより、現代美術の支柱となって
ベルギーの画家達に影響を与えたようです。

「二十人会 レ・ヴァン」の当初メンバーには、アンソールや
クノプッスも参加していました。フランス印象派では、スーラ、
シニャック、ピサロなど主だった作家の展覧会も行われました。
そこで、スーラの展覧会は大成功となり、点描画のスーラの
印象派画風として新たな革命が起こったとのことです。
ゴーギャン、ルドンなどもその頃は全く無名の画家でしたが、
実質的にこの「レ・ヴァン」で二人とも始めて大成功すること
になりました。ゴッホもフランスでは成功しませんでしたが
「レ・ヴァン」の展覧会で生涯に一枚だけ「赤い葡萄畑」の絵を
売ることができたそうです。400フランでベルギー女性により
購入されたとのことです。(Yukoさんのブログで詳しく書かれて
います)。本当にこの「レ・ヴァン」は印象派の画家達にとって
救われた聖地のようですね!

以下、図版でもご紹介いたします。

I. 印象派の波

  margalet 《マーガレット》1897
                     
         エミール・クラウス (1849-1924)   
                                                              《読書する女》1890

                clause

    今回のベルギーの近代美術展では一番美しい作品ですね。
    このあと、1905年にクラウスが描いた《藁を積む女》も展示
    してありましたが、急に色彩が明るくなってフランス印象派
    からの影響を受けたのがはっきりと分かりました。それに
    してもこの《読書する女》は何か日本的な感じもして優雅で
    きれいですね!本当に自然と人間の美しさの素晴らしさが
    この絵の中に表されていてこの一枚だけ観れただけでも
    良かったです。

II. ベルギーにおける展開

     spilliart 《係船柱に座る魚師のいる波止場》
                                            1909
                     レオン・スピリアート

           100年前の描かれた絵にしては構図が大胆である、
           と先生もおっしゃっていましたが、私もこの絵は
           色彩も美しくシャープ感もありとても好きです。
           斬新なデザイン画のようですね!

          saderelu 《冬の老果樹園》
                          ヴァレリウス・デ・サデレール
                                                 1925

     一目見たとき、ブリューゲルの絵かと思いましたが
           先生もブリューゲルの「ベツレヘムの嬰児虐殺」の
           図版を見せてくださって、木の描き方などこの作家
           はブリューゲルから影響を受けていると教えて下さ
           いました。 雪に埋もれた平野と家々がいかにも
           冬景色といった感じですが、木の下に丸い輪が
           描かれているのはそこだけ温度が暖かく春に近い
           冬でしょう、と先生ととらさんは説明して下さいました。
           寒そうなのに暖かい感じがするのは家が少し歪んで
           描かれていて、なんとなく面白い構図だからかもしれ
           ません。

     delborポール・デルヴォー 《会話》 1944

          シュレアリズムのところで、音氏が解説し下さった
          のは、「目に見える世界を描くのは印象派で、
          目に見えない世界を描くのは象徴・表現主義で
          あるが、シュレアリズムは超現実主義で現実の
          世界ではなくなっている。どの作品も不思議で
          夢のような非現実的な世界を描いている。見る側に
          問いかけをするので、対話が広がる。」

    「このデルヴォーの作品は、女性、骸骨、陰と
          描いているが、どんなんに美しい女性も死が
          待っている、ことを描いている。」

     もう一点、デルヴォー《謎》の絵の前では、
          皆で立ち止まっていろいろと会話が弾みました。
          私は初めてデルヴォーの不思議な絵を観ましたが
          思っていたほど違和感もなく、色調も明るく感じて
          女性の無機質な美しさに魅了されました。
          先生は「人間の大きさをゆがめている。手前と奥と
          大きさが違って、デルフォーの遠近法という。」と
          教えていただきました。キリコのようでいて、もっと
          親しみが持てて案外、人間的な温かみを感じました。

     ensor
                              ジェームズ・アンソール
              《笑いから涙へ》 1908

     アンソールのような絵は今まで食わず嫌いで
           今年春の庭園美術館でも庭園のバラを何度も
           観にいきましたが、ついに美術展には入らずに
           昨日、初めてご対面しました。非常に明るい絵で
           《不思議なバレエ》の作品も舞台から今にも音楽
           が聞こえてきそうな楽しい絵で嬉しい驚きでした。
 
           私の好きな福永武彦氏の《芸術の慰め》でも
           アンソールについて書かれていましたので。。

芸術は怒りや、空しさや、反抗や絶望をも表現する。
そのような幻想的な内部風景もまた人間の創造した
ものであり、それが人間に関わる芸術である限り、
それが通常の意味での「慰め」でないからと言って、
私たちはそれを避けることは出来ない。

ジェームズ・アンソールの芸術が、あなたをも慰め
ないときまったわけではあるまい。この奇怪な、
魅せられたように骸骨と仮面とを描いた、風刺と
虚無との画家の作品に、不思議な感動を覚えるの
はわたしばかりであろうか。   

仮面という主題が、彼の本質的なモチーフとなるのは
1888年以後、彼の属していた「レ・ヴァン」のグループ
展でさえも、彼の作品を拒絶するようになった頃からで
ある。彼は失望し、自分自身のために、グロテスクな
作品を次々に描いた。しかもそれまでの暗い寒色系の
色彩が、もっと明るくて豪奢な色調に移った。    

ゴッホやムンクと較べて、アンソールの最盛期の色彩は、
鮮やかな黄色や朱や緑を混えて、はるかに装飾的で
あり、しかも描かれた対象は、初期のリアリズムを拭い
去った非現実的な人物群像なのである。

III. 抽象絵画へ 

    音氏の説明です。
       「目に見えない内面の世界を描く可能性が
         広がっている。何を描いているのかわか
         らない。フォーヴィズムで色彩を解放した。
         感情を直にキャンバスにたたきつけるので
         感情がキャンバスに現れる。」
         

    私は抽象絵画は結構好きで、色彩と線の
        リズムが弾けていて面白い作品が多かった
        ように思います。ここでも、これなんだろう?
        とみなさんと謎解きのように対話していました。
       

  今日は久しぶりに真面目に感想文を書きました。
    ベルギー近代美術展でとても多くのことを勉強
    できたので、これから絵を観て行く上でも今回の
    ことが知識としてかなり繋がっていきそうです。
    一人で観ていると、アンソールなんてなるべく
   観ないようにすると思いますが、先生が印象派を
   取り入れているでしょう、なんて言われるとハッと
   するほど明るいのはそうなんだ!と気がついて
   ドクロさんも可愛く見えたりしました。人間は仮面
   を被っていると思って描いたドクロの作品を観て
   画家って大変な職業だと思いました。でも、芸術は
   綺麗な絵ばかりではなくこういった自己の苦しみを
   表現するゴッホやムンクやアンソールの絵も観る
   ことで自分の内面にも向かい合うことができるの
   ですね。

  それから、常設展へも連れて行っていただきまして、
   青木繁の作品を小作品ながら3作品も観れたことは
   大きな収穫でした。青木繁と森田恒友の共作で
   「春の夕」は《海の幸》と《わだつみのいろこの宮》の
   中間位に描いた作品で、シュールな感じの青木の
   世界が描かれていて素敵でした。「奇人でヒモだけど
   やっぱり大物だ!」とみんなでワィワィその場で
   ちょっと盛り上がりました。

  その後、ベルギー・ワッフルなど頂きならがおしゃべり
    をした後に、紅葉がちょうど見ごろの府中の森公園を
    散策し駅へと向かいました。  途中のベンチに素敵な
    若い女性 (アンとミッシェル)の彫刻が2人座っていた
    ので、その間に座り、みなさんとお写真を撮ったりと
    楽しい時間を過ごせました。

    素敵な彫刻は、朝倉響子さんの作品で、彫刻家
    朝倉文夫氏の次女さん、ととらさんが教えて下さい
    ました♪

   今回もとっても楽しい鑑賞会で幸せでした~♪ 皆さん
    本当にありがとうございました!!      

   

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コメント

こんばんは。
≪冬の老果樹園≫を見たとき、私も一瞬ブリューゲルを連想したのですが、
やはり影響を受けていたのですね。
またひとつ勉強になりました。
TBさせていただきますね!

投稿: リカ | 2005/11/28 00:26

宮が、大きく感じとか久しぶりとかをデルヴォーしたはずだったの♪


投稿: BlogPetのJenny | 2005/11/28 14:46

先生同伴でなかなか贅沢な鑑賞会ですね。うらやましいです。
ベルギーの王立美術館は昔何度か行きましたが、この頃行っていないので又行きたいものです。

投稿: seedsbook | 2005/11/28 15:36

リカさん

コメントとTBをありがとう♪

リカさんもこの展覧会は愉しまれたようですね!私も観なれない不思議な絵を沢山鑑賞できたし、帰りのカエデの美しさを堪能できて大満足の展覧会でしたww

また、千葉でリカちゃんとご一緒にレオナルドの作品を観れると嬉しいけどねぇ~(*"ー"*)♪

投稿: Julia | 2005/11/28 20:58

seedsbookさん

コメントありがとうございます。
もうそちらでは雪が降ったようですね~。
きれいな初雪のお写真、こちらから拝見させていただきましたヾ(´ー`)ノ

この展覧会のコレクターは、ドイツ人ハインリッヒ・サイモン氏で本文中に書くのを忘れてしまったのですが。。。HPから引用すると。。

「1970年代にベルギーに赴任するとベルギー近代絵画に心酔し、アンソール、デルヴォー、マグリット、スピリアールトなどを次々と収集し、現在ではベルギー近代絵画の屈指のコレクションとなっています。」

少々、変わった系(笑)がお好みだったのでしょうが、私もあまりこういう絵を一堂に観たことがなかったので、大変興味深く鑑賞できました。

こちらはまだ紅葉が盛りですが、seedsbookさんの地域はすっかりと冬ですね!お風邪を引きませんようにねぇ~。。

投稿: Julia | 2005/11/28 21:38

不覚にもマグリットがベルギーの画家とは知りませんでした。
そういえば、2002年にBunkamuraで『マグリット展』を観にいったことを思い出しました。ちゃんと図録読んでない証拠だなぁ、これはorz

投稿: Megurigami | 2005/11/29 20:51

Nikkiちゃん

こんばんは~♪
その節は楽しかったわねぇ~o(*^▽^*)o~♪

あんなに真っ赤な紅葉は久しぶりぶり~~★

>不覚にもマグリットがベルギーの画家とは知りませんでした。

 んですねぇ~!ルネってついてればすぐにわかったけど、マグリットだけでちょっと暗い絵だったから全然違う画家だと思っちゃたしぃ~(^_^;

 まぁ~なんかアンソールとかデルボォーさんたちも意外と人間味のある絵を描くだわぁ~って思ってホッとした感じだったわね!
 
 日曜日はNikkiちゃんがこれないそうで残念ですけど~~(/_ ;)

投稿: Julia | 2005/11/29 21:20

すばらしいレポですね!

おそらく何時間かかかったのではないでしょうか。あまり負担がかかる方法だと、継続するエネルギーも相当なものになるのではと、いらぬ心配をしてしまいます。
これからも長く続けてくださいね!

投稿: ike | 2005/12/01 23:42

池先生、

いろいろとお疲れ様でした。

いえいえ、フランスの印象派の影響と聞いて、ちょっと張り切りました(^_^;

でも、楽しく書けたんですよぉ!全然、大丈夫です!! でも、その他が全然、書けていなくて。。なんか鑑賞会でないとレポも書けなくなってしまった感じで、かなり依頼心が強い自分が情けなかったり。。。

投稿: Julia | 2005/12/02 00:34

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