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2005/08/30

ブリューゲルとシスレーの雪景色-暗さの文化論No.2

       brueghel_snow00

    こんばんは。
   少し秋風も立ち始め、夕方はしのぎ易くなりました。
   でも、これから暑い夏の疲れが出やすいので、どうぞ
   温めのお風呂に浸かって、お体を休めてくださいね。

  今夜はまた、ブリューゲルの「雪中の狩人たち」と
 
フィリップス・コレクション展でほどんどの皆様が
  感激されたとおっしゃるシスレーの《ルーヴシェンヌの雪》
  を 「暗さの文化論」No.2 (
No.1)に含めてお届けしたい、
  と思います。

  No.1の記事に「フランスに揺られて」のPaul様から
  ご丁寧なコメントが寄せられ、また私の質問に対して
  その回答となる記事をPaul様ブログに記事として
  書いてくださいました。とても感激です!!
  以下はPaul様がお調べいただいた「古気候学」について
  少し掲載させていただきます。

 「1565年、ピートル・ブリューゲル父が  『雪中の狩人たち』
  のなかで厳寒の北ヨーロッパの風景を描いた。この年は、
  ヨーロッパの冬が特に厳しかった16世紀の中で特別の年
  ではなかった。世界各地の歴史的・物理的な記録を見ると、
 1400年から1900年の間の大部分の年よりも気温が低かった。」
  SCIENCE 2001年4月号

 この年は、小氷河期 (Little Ice Age) と呼ばれていた500年
  にわたる時代で最も厳しかった年であったということのようだ
  (この事実には、正直なところ目を開かされた)。

    -中略 -

 
気候の変化により人間の活動は影響されるが、同時に人間
  の活動が気候の変化をもたらすことも忘れてはならない。
  他の領域と同様に、将来を占うには過去を研究するしかない
  というわけである。

  自分の絵が古気候学の資料になろうとは、ブリューゲルも
  思いもよらなかったであろう。

 Paul様がお調べになったとおり、本当にこの頃は
 ヨーロッパでも一番寒い時期だったのかもしれま
 せんね。なんでも、この頃はアルプスの氷河の
 大進出があったために余計寒かったとのことです。
 でも、狩人達の歩いている姿や子供達が元気に
  外でスケートをしたりと極寒の中にも、人間や空を
  飛ぶ鳥なども何か今よりも自然と共存して逞しく
 生きているように見えます。

 それから、同じくコメントを下さった「カイエ」のlapis様が

  でも谷崎潤一郎とは意見が合わなそうです。(笑)

 
と書かれていたのですが、その逆も真?で、この
  「夜は暗くてはいけないか」の本の中に
  「『
陰影礼讃』 再読」として谷崎氏の言葉を引用しながら、
  昔の日本家屋の美しい光と影について紹介しています。
  この本は一年前に読んだので忘れてしまっていましたが、
  lapis様によりまたその部分を再読できました。

  それから、同じこのような「ブリューゲルの暗い空の
下にある国々」にあたるフランスはパリから約16キロ
ほどに位置していますルーヴシェンヌの雪を描いた
シスレーについても少し触れたいと思います。

         sisley

                  『Snow at Louveciennes 』1874

 フィリップス・コレクション展へ行った皆様が、
  ルノワールの「船遊びの昼食」はもちろん
  素晴らしく感激したが、その次にこのシスレーの
  《ルーヴシェンヌの雪》が本当に良かった!と口々に
  おっしゃっています。

  この絵が描かれた1874年12月にも大雪が降ったそう
  ですが、このような情緒のある雪景色は私も初めて
  観たかもしれません。あまりにも心に強く残ってしまって
  感想文が今になってしまうほどですが、上のブリューゲル
  の雪はもうカッチカッチとしていて氷つくようですが、私は
  この絵を観たときに寒さは全然感じずに、むしろ雪の反射
  で心が温まるような気がしました。図版よりももっと雪に
  厚みがあり、雪の部分が層になっていてその雪に包まれて
  しまいそうになりました。この絵はとても日本的で傘を差して
  いる女性も着物でも着ているかのように感じてしまいます。
  左上の空が明るいのは少し春に近いのかしら?とも思って
  しまうほどです。

  シスレーの優しく温もりのある雪景色に完全に魅了されて、
  9月4日(日)の最終日にでも駆け込んでしまいそうです。
  どちらも暗いヨーロッパの冬景色でしたが、作者が冬の
  美しさを余情的に描いたいつまでも心に残る素晴らしい
  作品だと思います。

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コメント

Juliaさん、こんばんは
拙ブログのご紹介までしていただき、ありがとうございます。
まさか「『陰影礼讃』 再読」まであるとは思いませんでした。お陰で、「夜は暗くてはいけないか」に対する関心が強くなりました。
ブリューゲルの絵が古気候学の資料になるというお話、たいへん興味深く読ませていただきました。絵画にも様々な資料的価値があることに驚きました。
ブリューゲルの「雪中の狩人たち」は、小学校の図工の教科書で初めて見たのですが、最初は西洋の絵だとは思いませんでした。どうも、僕がイメージする西洋の絵とは異質であったようです。それほどブリューゲルの絵は個性的なのだと思います。

投稿: lapis | 2005/08/31 21:36

lapis様

こんばんは。ご丁寧なコメントを有難う御座いました。

拙ブログのご紹介までしていただき、ありがとうございます。
  lapis様のコメントを勝手に引用させていただきm(*- -*)mス・スイマセーンでした。
これからも多くの方が訪れるかも知れませんが、よろしくお願いします(*- -)(*_ _)

>ブリューゲルの絵が古気候学の資料になるというお話、たいへん興味深く読ませていただきました。
 それが、また今ほかの事を調べていたらブリューゲルのこの絵について書かれているHPがあってそれを紹介しようか迷っていますが、また後日にしますね。。
 
>最初は西洋の絵だとは思いませんでした。どうも、僕がイメージする西洋の絵とは異質であったようです。
 この絵はブリューゲルの中でも独特ですよね。気象学者たちは、この絵についてやはり同作者と同じような氷が厚く固まっていることがなにより寒さを現している、と書かれていましたが、絵画の資料的価値のお手本のようですね!

 その資料的価値といいますか、昨日会社に「USA TODAY」というアメリカの科学雑誌の表紙に、広重の浅間山の火山が爆発した版画が掲載されていまして、「沈み込み帯」という現象を現していると書かれていました。また時間のあるときにアップしますね!

 

投稿: Julia | 2005/08/31 23:14

ブリューゲルについては、Floral Musée様のコメントのおかげで勉強させていただきました。少しだけ目が開けたように感じています。ありがとうございました。

投稿: paul-ailleurs | 2005/09/01 07:04

Paul様
コメント、ありがとうございます。
作家は絵画の中にその当時の気候風土といったものを含めて後世に残す仕事をしているようですね。
Paul様のブログで、ラ・トゥールを取り上げられていましたが、戦争の絵を直接、描かなくても「悲惨さ」というものは何百年立っても絵の奥底から感じ取られるものです。
それぞれの画家がそれぞれの最高の技(ワザ)を使用し、その当時に感じた直感を現して、永遠に私達に大事なことを語りかけているように思います。
また、ブリューゲルについては続きますのでよろしくお願いいたします。

投稿: Julia | 2005/09/01 07:37

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ブリューゲル「雪中の狩人たち」と小氷河期 Julia様が「ブリューゲルとシスレーの雪景色-暗さの文化論」で、ブリューゲル(Pieter Brueghel the Elder)の「雪中の狩人たち」(The Hunters in the Snow)を取り上げている。6月にウィ−ン美術史博物館を訪れた時のブリューゲルの部屋の感動を思い出す。(あまり確かでないが)世界で始めて雪景色を描いた絵画と説明があった記憶がある。3部作だったと思い返... [続きを読む]

受信: 2005/09/13 17:47

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